そこには、枯れた植物がありました。
活き活きとした鮮やかなライトグリーン、力強く伸び、柔らかく広がってしなる葉、美しい葉先。1ヶ月前に持っていった元気なアレカヤシは翌月のメンテナンスに行ったときに枯れていました。
古い葉は見るも無惨な茶とも灰色ともとれぬ色に変色し、ぐったりと頭を垂れるその姿は一ヶ月前の姿からは想像もつきませんでした。
2013年の4月から植物を扱う仕事に携わり、3ヶ月ぐらい経ってようやく一人でお客様へ植物をお届けし始めたときに見た光景です。
それから今日までさらに3ヶ月ほど、何度も、場所を変え、植物を変え、同じ光景を目にすることになりました。
お恥ずかしい話ではありますが、私はそのとき初めて本当の意味で植物が枯れることの意味を知ったような気がします。
植物を生かすということ、植物と生きるということ。
植物は驚くほどに正直者です。
私がしっかりと向き合いもせずに、理解もせずにいることなどお見通し。
声を聴くことができていませんでした。
「そんな暗い場所に置いてほしくないな」
「もうのどは乾いてないよ」
「狭いし、窮屈で、息がしづらい」
「今は、そこは、切らないで欲しい」
なにも知らなかったことを知ったとき、はじめて今まで楽しみをみつけられずにいたこの仕事に、今育てている植物に、少しずつ、確実に興味が湧いてきました。
相手をよく知り、気持ちを考えてたくさんの愛情を注げば、答えてくれる。
その逆も然り。
そんな驚くほど素直で、正直で、かわいいやつなんです。
だからこそ、植物は人々を魅了する。
誰もが1本ででいいから、愛してやまない植物を持つようになれば世界が変わるかもしれません。